2011年3月2日水曜日

渡航前夜の出来事

私たち夫婦にとって、初めての新しい命を授かったと判明したのは、
研究のため私が単身で渡米する、まさに前夜のことでした。

医師によると、妊娠初期のフライトは、胎児にも母体にも問題ないとのこと。
夫と、渡航時期の延期または中止も検討しましたが、
国と大学、多くの方々のご支援を頂いた、貴重な研究機会を逃すわけにいかないと、
予定通り、6週間の渡航を決断しました。


夫にとって、妊娠初期の妻を単身渡航させるのは、本当は不安な決断だったと思います。
(自他とも認める『恐妻組合員』としては、羽が伸ばせると思ったかもしれませんが)
しかし、4年前、MBA留学に送り出してくれたのと同じ寛大さで、
「無理のない範囲で、しっかり頑張っておいで」と言って見送ってくれました。

えいやっと、フライトに乗り込んだものの、
急に心細くなって、機内では涙が止まりませんでした。


周りが寝静まった頃、フライトアテンダントの方が、気を遣って、
「左手にオーロラが見えています」と優しく声をかけてくださいました。

窓を開けて覗いてみると、暗闇の中にうっすらと光のカーテンが踊っており、
その向こうには、星々が歌うように輝いています。

私は、初めての子供への手紙をしたためることにしました。

『 私たちの赤ちゃん、
 

世界はこんなに広くて、美しく、不思議なものに満ちています。
一つひとつの発見を、善いものに触れられた喜びを、
これから家族で共に分かち合って行きましょう。

あなたには、生まれる前から、人々の優しい気持ち、世界の美しいものに、
たくさん触れる機会を頂いています。
あなたには、自分が受けたそれらの恵みを、
他の人々にも分かち合える人になってほしいと願っています。


世の中には怒りや哀しみが渦巻き、
心身の飢えや渇き、病い
にさいなやまれる時があるけれど、
 あなたには、自分のそれらを乗り越え、他人のそれらを癒やす人になってほしい。

パパとママは、これまでと同じくらい、いえ、これまで以上に、
お互いを大事に、愛し合っていきます。その結晶があなたなのですから。
そして、あなたが健やかに生まれ育ってくれることを第一に、
これから一緒に歩んでいきます。

あなたに出会えるのが、今から待ち遠しいです。
どうか元気に生まれてきてください。

あなたのことを誰よりも大切に思っている、
パパとママより。』

1 件のコメント:

  1. 読んでいて涙が止まりませんでした。
    元気な赤ちゃんを産んでくださいね。

    Sakiko

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